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O ループロープ・インファント/X

ループロープ・インファント/× 「――ふ」 三条結は声を出す前に、体温ばかりに上昇した熱を机の上に漏らす。そしてためらいもひっかかりもなく優雅に立ち上がり「キリツ」と「レイ」を無難にこなす。いつも通りの甘い声をそれなりの枠の中に入れて出荷する。…

N テンタティブ・テンタキュラ・ユグドラシル/3

テンタティブ・テンタキュラ・ユグドラシル/3 今から――あのトイレの中で。 年下の子に弱みを握られたあたしが――。 甘い声をあげて、それを全部映像に残されて――。 今度は、街中を、コート一枚で――。 寒くて――、粗相してしまう八頭佳恋――。 そして、お仕置…

M テンタティブ・テンタキュラ・ユグドラシル/2

テンタティブ・テンタキュラ・ユグドラシル/2 「せんぱい、我慢しなきゃダメですよ。最弱にしてありますから、わたし、いつものところで待ってますから。五分後に来て下さい、そしたらきっと十分後には着くと思うんです。わたしが中でどんな風に待っている…

L ステンドグラス・ストラテジー/7

ステンドグラス・ストラテジー/7 八頭佳恋にはもう、三条結の言うことを聞く以外の選択肢はなかった。 佳恋がこの沼の中に沈まない選択肢はいくらでもあった、選択肢のどれかはもしかしたらこれよりも救われない悲劇が待っていたかもしれないけれど。 最後…

K ループロープ・インファント/2

ループロープ・インファント/2 三条結は、自室のPCの前で、三角形の口をしている。 『――るぅちゃんは、どんな格好しているの?』 『えー、るぅは、まだせいふくです』 『そーなんだ、今どんな感じ?』 『どんなかんじって?』 『どんなってさーぁ、わか…

J ステンドグラス・ストラテジー/6

ステンドグラス・ストラテジー/6 三条結はいつも縄をして学校に来た。佳恋は登校してくる結を自分の教室から眺めるのが日課になっていた。メガネを掛けて見ていた。いつも彼女の身体に掛けられた縄が見えた。 佳恋はそれを眺めながら、想像する。あの縄は…

I ループロープ・インファント/0

ループロープ・インファント/0 三条結はクラスの誰よりも進んだ女だった。 むろん「勉強が」ではない。そういうものには倦んでいた、お勉強は好きではなかったけれど、そこにあるものを理解するだけでいいなら簡単な事だった。誰よりも進んでいることは、…

H ステンドグラス・ストラテジー/5

ステンドグラス・ストラテジー/5 その場所とは被服室の隅ということだった。通気戸をくぐり中に入ると、三条があられもない格好で立っていた。 「――せんぱい、ごめんなさい」 「な……に? どうしたの、三条……さん」 カーテンは閉められていたけれど、扉は開…

G ループロープ・インファント/1

ループロープ・インファント/1 『るぅちゃん、今夜は暇なの?』 『いっそがしーです』 『そうなんだ、でもこんなところ来ちゃうんだね』 『たまってるんですよー』 『へえ、じゃあさくっとやっちゃう?』 『そんなことより、かわいい先輩がいるんですよ~…

F ステンドグラス・ストラテジー/4

ステンドグラス・ストラテジー/4 「ね、フェンリルって、何?」 「――IT関連企業?」 「なにそれ。ネット? あー……それかなあ」 「なにが、元ネタの話?」 「ねえ、それってなんか悪い(・・)?」 「ワル――? ……べつに悪かァー無いんじゃない? 何が良いか…

E ステンドグラス・ストラテジー/3

ステンドグラス・ストラテジー/3 「――え?」 赤い縄だった。 その縄は全身を取り巻くように巻かれていた。 佳恋の理解の範疇外だった。それがなんなのか実際よくわからなかった。佳恋の歪んだ視界は、その言葉通り歪んでいるから――はっきりとそれかどうか…

D テンタティブ・テンタキュラ・ユグドラシル/1

テンタティブ・テンタキュラ・ユグドラシル/1 ――真田瑛子は、魔法(まほう)少女(しょうじょ)である。 「真田さん、上手じゃーん」 「そうかな!」 「いま余所見してなかった? すげー」 「あはは、ボクにはワカっていたんだ。――冗談だよ!」 「真田さん、面…

C ステンドグラス・ストラテジー/2

ステンドグラス・ストラテジー/2 一月も半ばだった。 八頭佳恋は憔悴(しょうすい)していた。一つ前の授業はわかりにくいと評判の化学だった。コロイド溶液は我々でチンダル現象は人間社会の隠喩ということらしかった。なによりも罪なきクラスメイト達を憔…

B ステンドグラス・ストラテジー/1

ステンドグラス・ストラテジー/1 二年生もはやいもので三学期になった。正月も終わった。今年はお父ちゃんのところに帰らなかった。タイミングってやつが合わなかったんだ。だから年賀状が来た。「楽しくやっているか、たまには遠慮せずに帰ってきなさい」…

A ステンドグラス・ストラテジー/0

ステンドグラス・ストラテジー/0 八頭佳恋(やずかれん)は鷹である。鳶(とんび)から生まれたたったひとりの気高く賢く静凛とした鷹であった。たったひとりと最初から決まってしまっていたその鷹には、やがてひとりになってしまう娘の不憫(ふびん)を想い、生…